新居 池津子 専任講師

共通科目
arai
フィールドワークで子供の読み書きに学ぶ
授業で、子供は、何をどのように読み理解し、表現しているのか。それを探究するため、学校図書館や電子メディアに着目したフィールドワークを行っています。

教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 母娘2代で清泉の国文学科(現在の日本語日本文学科)の卒業生です。第二次ベビーブーム世代の私は、入学式当日のキャンパスでシスターにフルネームで名前をよばれ、入学初日から顔と名前を覚えていただけていたことに、清泉の温かな少人数教育にとても感動したことを覚えています。在学時代の思い出は多くありますが、その中から特に印象的な思い出を2つ紹介したいと思います。1つは、「福祉環境委員会」の立ち上げと活動です。学生どうしだけでなく先生方とも議論しながら、「福祉環境委員会」を生徒会から独立した団体として分離させ、2年生で初代委員長に就任しました。初年度はわずかな予算でしたが、毎月大きなイベントを開催するという強行をメンバーの協力のもとで成し遂げ、翌年には何倍もの予算を得て、後輩に引き継ぐことができました。もう1つは、日本語日本文学科(当時の国文学科)の藤澤秀幸先生と司書課程の斎藤陽子先生との出会いです。お二人は、私のその後の人生を豊かなものへと導いてくださったと感じています。それは、当時、学長をつとめていらしたシスターの遠山紗江子先生のお言葉を拝借すれば、まさに“神様のお導き”であったのではないかと思っています。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 専業主婦時代に、当時息子が通っていた小学校で、学校図書館ボランティアを立ち上げたことがきっかけです。しかし、活動の幅を広げるうちに、学校図書館の活用状況は様々で、多くの課題があることに気づきました。そこで、そうした課題を解決するための手がかりを得るため、自分なりに国立国会図書館で情報を収集してみました。その結果、学校図書館が教育活動の中で利活用することの意義を示す実証的な授業研究が望まれつつも、ほとんど行われていないことがわかりました。それならば、自分がやってみようと、斎藤陽子先生のご助言を賜りながら、図書館情報学ではなく、あえて、教育学(教育心理学・保育学・教師教育)を専門とする東京大学の秋田喜代美先生の研究室に入りました。そのため、大学院では清泉で学んだ領域とは異なる専門分野を学ぶこととなりましたが、学問の方法や作法については、清泉での藤澤秀幸先生の厳しくも温かなご指導がとても役立ちました。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 学校図書館に関する研究は、図書館情報学では、学校図書館法をめぐる歴史的な実証研究などの知見が少しずつ蓄積されてきていました。しかし、実際の学校教育の現場では、戦後初期のわずかな期間に図書館教育が実験学校で試みられただけで、「本の倉庫」と揶揄されるような状態が何十年も続いてきたというのが実情です。しかし、2000年前後から国によって推進されている読書活動に加え、近年、文部科学省が告示する学習指導要領では、「総合的な学習の時間」など探究学習の導入や情報活用能力の育成が注目されるようになってきました。こうした教育課程における学校図書館の寄与を、フィールドワークを通して、多様なメディアから得た知識を他者と共有したり知識を再構築したりする子どもの姿を実証的に示すことを試みている点に、研究としての面白さとオリジナリティがあると考えています。また、研究成果から得られた知見を教育現場の先生方に還元することで、教育実践に役立てていただけることは研究者冥利に尽きます。

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 どのようなキャリアを思い描くのかは人それぞれだと思います。なかでも、女性のキャリアは非常に多様だということを卒業生の一人として感じています。一見すると、同じようなキャリアを辿っているようにみえても、置かれている環境や経験はそれぞれで異なるかもしれないということです。たとえば、専業主婦をしていた私が、縁あって清泉に教員として帰ってくるということがあるように、です。でも、そのような多様なキャリアを辿る可能性がある女性だからこそ、どんな状況にも応えうるよう、学び方を学んでおく必要があるのではないでしょうか。もしかしたら、清泉では学べないことも、なかにはあるかもしれません。しかし、これもまた、私がそうであったように、清泉だからこそ学べることもきっとあると思います。そして、それに気づくことができるか否かは、皆さん次第です。私もまた、教員というよりも一人の学び手として、皆さんと一緒に学び合いたいと思っています。

教員紹介


氏名
新居 池津子
フリガナ
アライ チヅコ
職種
専任講師
所属
司書・教職課程
取得学位
博士(教育学)
学位取得大学
東京大学
最終学歴
東京大学大学院(教育学研究科)博士課程修了
専門分野
教育学
図書館情報学
研究テーマ
学校図書館を利活用した探究学習や読書活動において、多様なメディアを通して、子どもはどのように学んでいるのか。
所属学会(役職)
及び受賞歴
【所属学会】
日本読書学会
日本図書館情報学会
日本教育方法学会
日本教育心理学会

【受賞歴】
日本図書館情報学会奨励賞
主要業績
【著書】
・『中学校学校図書館における生徒の居方に関する検討』(2021, 風間書房)

【論文】
・「昼休み時間を過ごす中学生から捉える学校図書館の機能―書架によって創出される場所における居方に着目して―」(2020, 『日本図書館情報学会誌』Vol.66, No.1)
・「電子メディアと印刷メディアでは生徒の読書行為はどのように異なるのか―中学校の授業における指さしと注視に着目して―」(2023, 『読書科学』第64巻, 第3・4合併号)
・「調べ学習授業における教師との役割分担に現れる学校司書の専門性に関する検討―中学校の生徒と本を結びつける専門的行為の特徴に着目して―」(2022, 『日本図書館情報学会誌』Vol.68, No.1)
・「書架の創出する場所が探究的な学習活動に取り組む中学生へ及ぼす影響 ―学校図書館における教師支援としての足場がけに着目して―」(2022, 日本読書学会『読書科学』第61巻, 第3・4合併号)
・「学校図書館は授業において『第三の場所』としてどのように機能するのか―中学生に対する教師のインフォーマルなかかわりに着目して―」(2018, 日本読書学会『読書科学』第60巻, 第3号)

・神奈川県立高等学校 校内研修会 外部講師