福田 健 教授

共通科目
fukuda
学ぶ仕組みを認知科学で解き明かします
人が何かを理解・学習したり間違えたり誤解する心の仕組みを明らかにする認知科学の中で、特に、問題解決、学習方法、セキュリティ心理を専門としている。


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 30数年前に大学の文学部に入学し、心理学に期待したにも関わらず、授業から垣間見える心理学の世界は絶望的に面白くなく科学的でもなく、大学での学びに絶望しました。授業には出席せず単位を落としまくって、気が付いたときは中国語中国文学専攻にいました。入学前から大学とは科学的にものを考えられるところであると期待していた自分は、授業の中で考える場を見いだせず、授業をなめてかかり、人と話す場を求めてサークル活動やら社会活動に向かっていきました。皮肉なもので、なめてかかった授業では良い成績を修め、真面目に考えて悩んだ授業はあまりよからぬ成績で通過、という日々が続きました。今思い出しても残念です。でも、真面目に考えて悩んだことは、その後、以下の展開に大きな役割を果たしてくれました。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 大学に入学する前に考えていたことや、大学に入学してからサークル活動や社会活動の中で見たものなどから、障がいを持つ子どもに対する科学的な教育方法を求めるようになりました。さらに、障がいを考える中で「障がいされているもの(人の能力)」を精緻に捉えたいと思うようになり、他大学大学院の児童精神医学の研究室に進みました。学部とは全く分野が異なります。進学すると、いつの間にか授業を大切にすることを憶えましたが、それでも、圧倒的に多くのことは、授業以外の機会に学んでいたと思います。子どもと関わり、考えて、人と話し、本・論文を読む、という流れを繰り返す2年間の中で、人のさまざまな知的振る舞いを精緻なモデルを作りながら捉えようとしていた認知科学を知るようになり、それを学べると思われた他大学大学院にさらに鞍替えして進学しました。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 人は、日々の生活と仕事の中で、何かを考えたり憶えたりやろうとして、できる・わかるようになったり、ひらめいたり、上手になったりしています。それを支えている心の仕組み・処理過程については、誰も気を回さないままに毎日を過ごせています。でも、例えばそれらがうまくいかない・できないときに、そうした「できるということ」「わかるということ」の意味に気づかされます。「なんで自分はこれができないのだろうか」「なんであの人には通じないのだろうか」など。そうした事態や過程を精緻に捉えることは、できない人・わからない人を支援することにつながりますし、また、できない・わからないことがある人への見方を変えていきますし、そもそも知とは何かをみることにつながっていきます。それは、実験や観察という実証データを通すことで奢らず謙虚に人を哲学することで、つまり、人についての謎を見つけることと謎を解くこととそれによって人の見方や人との関わり方が変わることを意味していて、これほど面白い科学はありません。
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Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 大学とはものを考える場所です。考えることを通して学べる場所です。何かを知って「面白い」と感じる機会があるかと思います。確かにそれは大切な機会です。でも、「知ることが面白い」で終わらせないでください。なぜ、どうして、どうやって、だからどうなのさ、という自分の問いに繋げて考えてください。考えたら、その答えを探すようにして学んでください。学ぶ手段は授業だけではありません。本もあれば人もいます。大学はそうした学びの手段が豊かにあるところで、そこにこそ大学の価値があります。だから、自分から人に問いかけ、人の話を聞いて、考えてください。もっと自分で考えていいのです!! 自分からわかりたい・考えたい・解決したいと思ったことについてこそ、人の心はうまく学べるように作られています。これは認知科学が明らかにした、人の心についての仕組みであって、期待とか理想ではなく事実なのです。誰もがこの事実から逃れることはできません。

教員紹介


氏名
福田 健
フリガナ
フクダ タケシ
職種
教授
所属
司書教職課程
取得学位
教育修士、教育学修士
学位取得大学
東京大学大学院教育学研究科学校教育学専攻博士課程単位修得満期退学
専門分野
認知科学、情報セキュリティ心理学
研究テーマ
教育における領域知識の転移・獲得。特に、学習対象に関する領域知識が乏しい場合における、学習戦略の評価と選択、既有知識の活用、対象モデルの構築、外的資源の活用、など。
所属学会(役職)
及び受賞歴
日本認知科学会
日本心理学会
日本教育心理学会
日本発達心理学会
情報処理学会
主要業績
・類推と比喩 日本児童研究所 『児童心理学の進歩』Vol.36, pp.53-77.
・事象の想起における抽象化の効果 日本認知科学会『認知科学』 Vol.4, No.4, pp.72-82.
・アナロジーと想起,日本認知科学会,『認知科学の探求 類似から見た心』 pp.120-147.
・(共訳)『アナロジーの力』ホリヨーク&サガード著 鈴木宏昭&河原監訳 新曜社 1998年
(原著: Holyoak, K. J. and Thagard, P., 1995, Mental Leaps: Analogy in Creative Thought, The MIT Press.)
・識別符号の秘匿強度推定におけるヒューリスティックス 情報処理学会 『情報処理学会研究報告:教育とコンピュータ』 CE-87, pp.53-60.