平田 博嗣 特任教授

共通科目
Hirotsugu Hirata
教師を目指す人を応援します
教職課程を担当します。国内外の教育現場の経験を踏まえて、教育の面白さと難しさを理解し、一緒に「教育とは何か」「教師とは何か」を考えましょう。


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 家庭教師をしていた時、子どもに「先生、心って何色ですか?」と質問されました。私はとっさにブルーと答えたかったのですが、「ブルーの意味がわかるかな? そもそもなんでこんな質問するのかな?」と迷い、即答を避け「君は何色なの?」と聞き返しました。その子は「スカイブルー」と返してきました。「なぜなの?」そこから心は何色かを何回も議論し始めました。子どもの答えには深い意味があると感じた時でした。
 「室町文化と応仁の乱」を卒論のテーマにしていまして、古い権威のある書物は大学で探し、そこにないと都の中央図書館、国会図書館で探し勉強していました。一所懸命読んでいるとその本がどうしても手に入れたくなり、神田の古本屋街を歩きまわり、とうとう最後には京都まで探しにいき、見つけたときはうれしかった。今は全国の古本屋さんの情報を瞬時に手に入れられ、すばらしいなと思う反面、見つけ出す喜びが懐かしくも感じます。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 最初に勤めた学校が荒れていたので、学習に前向きでない子が多くいました。そこではいかにおもしろくわかりやすく教えるかが私の課題でした。歌を歌いますし漫談もします。手品も練習しましたし、おもしろ教材を集めまくりました。ですから大学の附属に移り、最初の研究授業の時、「わかりやすいね~」と言われるのは当然でした。良い授業=わかりやすい授業と思っていましたから。ところがこの言葉は決して褒めているのではないのでした。わかりやすければ、子どもは考えなくともわかるわけです。これがわかりにくければ、子どもは一生懸命に考えなくてはいけません。
 この言葉は、私が「考える社会科」に真剣に取り組むきっかけとなりました。自分の頭で考えて、初めて人は理解していくのです。いかに考えさせるかが私の課題となり、子どもたちへの問いかけの多い授業となりました。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 子どもは一人ひとり違う。それを一つの教室で同時に全員に教授することは容易ではない。そして受け取る子どもも千差万別で、それぞれが違う。しかし教室が一つのテーマで考えることにより教室は変わる。具体的には教師の発問により授業は始動し、自身で調査したり資料や過去の考えを提示されることにより急展開を見せ、生徒自身が意見を持ったならば、それはそれぞれの個性の発表・発揚の場となり意見の花が咲く。そこでは対話が始まり、対立が起こり、それを乗り越える叡智が必要となる。それは一人では到底成し得ない高みまで思考を錬磨することにつながる。その教室だからこそその仲間だからこそできた到達点である。しかしながら、ゴールはそこではない。一つの到達点にすぎず、そこから始まる疑問や向学心が後から後から湧いてくることになる。叡智獲得の作業は永遠と続き、その叡智獲得に用いた努力が彼らを磨き出す。

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 教育とは、教職を目指す目指さないに関わらず、だれもが必要であるものだと考えます。年齢を重ねれば、社会では先輩となり、家庭では親ともなるかもしれません。その段階で教育者なのです。今までは教育を受ける立場であり、受身の姿勢は否めなかったかもしれませんが、これからは違います。今までは首を引っ込めていれば嵐は過ぎたかもしれませんが、これからは違います。皆さんが授ける立場となる訳です。そこには責任が伴います。その責任の重さに時には押しつぶされそうになるかもしれませんが、逆にその重さをバネにして、力をつけるのです。でもひとりの力は弱いものです。しかし仲間と共に成長していけば良いのです。互いに助け合い、励ましあい、磨き合っていくのです。

教員紹介


氏名
平田 博嗣
フリガナ
ヒラタ ヒロツグ
職種
特任教授
所属
教職課程
取得学位
修士(教育学修士)
学位取得大学
東京学芸大学
最終学歴
東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程社会科教育専攻修了
専門分野
社会科教育、歴史教育、公民教育
研究テーマ
「考える社会科」
子どもが「考える」には、どのような授業が必要かを追究する。そこでは、十分な教材研究の上で、興味の湧く話、現物・DVDの提示、有効な問いかけ等が必要になる。そしてその授業が一人ひとりの子どもにとってどれだけの意味を与えるかが、評価となる。これらを総じた教師の活動が「発問を練る」ことに繋がる。
所属学会(役職)
及び受賞歴
日本社会科教育学会
日本教材学会

文部科学省 平成21年度優秀教員 表彰
主要業績
・『21世紀を創造するための社会科教育の改革』(共著) 東京書籍 1996年
・『朝鮮・韓国は日本の教科書にどう書かれているか増補版』(共著) 梨の木舎 1996年
・『総合的な学習と社会科』(共著) 日本文教出版 2000年
・『基礎・基本の習得をめざす新しい授業実践』(共著) 東京法令 2005年
・『学習力向上をめざす発展的学習の展開』(共著) 東京法令 2005年
・『学び合いで輝く・伸びる・高め合う』(共著) 東洋館出版社 2007年
・『中高社会科へのアプローチ-社会科教師の専門性育成-』(共著) 東京学芸大学出版会 2008年
・『ゆれる境界・国家・地域にどう向き合うか』(共著) 梨の木舎 2009年
・『思考力・判断力・表現力をつける社会科授業デザイン』(共著) 明治図書 2009年
・『これだけははずせない「キー発問」アイディア』(単著) 明治図書 2012年
社会活動、
文化活動等

・「日本の歴史」(サンパウロ日伯文化協会)など講演多数
・元東京学芸大学附属小金井中学校副校長
・前ナイロビ日本人学校校長
・中学校社会科教科書『新しい社会歴史』執筆
・『教材事典』(共著)など事典・辞書執筆多数
・参考書『中学総合的研究社会』(旺文社)など学習参考書、社会科資料集、問題集執筆多数
・『知っとくナットク世界ワンダークイズ101』(共著) 日本標準 2009年
・ODA民間モニター(JICA)インドネシア派遣 2004年
・「目標に準拠する評価」研究調査(2001~2004年度 国立教育政策研究所委託研究)
・「学力向上のための指導と評価」研究調査(2005年~2007年度 文部科学省・国立教育政策研究所委託研究)