兼清 慎一 教授

地球市民学科
kanekiyo
コミュニケーションをデザインしましょう
人と人、人とモノとの間のコミュニケーションを通じて、コミュニティがどのように生成されるのかを研究しています。また、広報・PRの実践にも取り組んでいます。


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 高校時代にNHK元記者の柳田邦男さんの本に感動して、テレビ局での報道という仕事に憧れを持って大学に入りました。大学では情報政治学がご専門の鶴木眞先生のゼミで学ばせていただきました。ゼミに入るのに、マートンという社会学者の『社会理論と社会構造』という専門書のレジュメをつくるという課題があったのですが、これが全身にじんましんが出るほどたいへんで、内容も全くわかりませんでした。でも、この「わからなかった」という経験が読書欲を駆り立ててくれました。「わからないけれど、なんだかすごいな。かっこいいな」と感じる本にも出会いました。沢木耕太郎さんの本にもはまりました。『深夜特急』を読んで、「海外をひとり旅したい」と思いましたが、目先の日々の楽しさにからめとられ、行かずじまいでした。卒業前に友人と2人でアメリカを車で横断しましたが、学生時代に旅をもっとしておきたかったなあ、と思っています。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 NHKに記者として入局し、25年間のキャリアの中で、海外特派員や報道番組のキャスターやニュース番組の編集責任者などを経験させていただきました。ですので、専門は放送、報道と胸を張りたいところですが、正直に言いますと、目の前の仕事をこなすのに精一杯でした。キャリアに恵まれたのも優秀な同僚、先輩、後輩のおかげです。ただ、働く人を応援する番組をつくるのは好きでした。誰かを応援することへの関心は今、広報・PRの実践につながっています。知らない場所に行き、知らない人と出会い、話を聞くのも好きでした。その延長線上で、大学院では文化人類学がご専門の伊藤泰信教授(JAIST)に師事しました。研究においても、ひかれるのはやっぱり人です。研究領域よりも研究者、現象よりもそこにいる人に心ひかれます。よい師とよい人との出会いに導かれ、今はデジタル通貨を活用した贈与コミュニティのデザインについて調査しています。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 研究テーマ(広報・PR、贈与コミュニティのデザイン)に共通するのは、誰かを応援するという営みです。学生に推し活の話を聞いていると、それもある種の応援で楽しそうだなと感じます。一方で、応援って難しいものだなとも思っています。たとえば、自分の店のスイーツを自分で宣伝するのと、第三者がクチコミで褒めてくれるのとではどちらが影響力があるでしょうか。クチコミですよね。でも、クチコミは店が思いのままにコントロールできるものではありません。贈与も難しいものです。贈り物をもらうと「申し訳ない。お返ししなくちゃ」という気持ちになることはありませんか。贈与は相手にお返しする義務を生じさせ、負い目を感じさせるといいます。贈与は動機も問われます。見返りを求めるとそれって贈与?と思われてしまいます。このように誰かを応援するという営みには多様な感情がついてまわります。そのことがおもしろくもあり、難しくもあります。

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 僕もみなさんも誰かを助けたり、誰かに助けられたりしながら生きています。その営みには感情、文化、制度、お金、技術などが絡み合っています。誰かを応援すること。誰かから応援されること。それは単純なコミュニケーションではありません。そんな応援のコミュニケーションをどうデザインするか。ぜひ一緒に探究しましょう。その学びは卒業後もみなさんの支えになるはずです。僕は教育も学生を信じて応援することだと考えています。学生のみなさんには教職員を上手に頼ってどんどん応援してもらってほしいですね。僕にとっては地球市民学科も応援の対象です。日本で唯一無二の存在だからです。学生にとっても学科のPRはコミュニケーションデザインの実践的な学びになります。ぜひ一緒に学科をPRして、その魅力を社会に届けましょう。最後に高校生のみなさん。まるで映画に出てくるような重要文化財の建物があるキャンパスをぜひ一度体感してみてください。

教員紹介


氏名
兼清 慎一
フリガナ
カネキヨ シンイチ
職種
教授
所属
地球市民学科
取得学位
修士(知識科学)
学位取得大学
慶應義塾大学法学部(法学士)、JAIST・北陸先端科学技術大学院大学(修士 知識科学)
最終学歴
JAIST・北陸先端科学技術大学院大学博士後期課程在籍中
専門分野
メディア論、知識科学
研究テーマ
誰か/何かを応援するコミュニケーションのデザインを研究しています。プロジェクトが2つあります。ひとつは広報・PRの実践です。もうひとつがデジタルコミュニティ通貨を活用した贈与コミュニティの生成です。これは地球市民学科の山本達也教授が実践しているプロジェクトで、その調査をしています。
所属学会(役職)
及び受賞歴
日本広報学会
日本メディア学会
日本文化人類学会
サービス学会
地域デザイン学会
主要業績
【論文(国際会議プロシーディングス)】
・The process of generating rhetoric to encourage participation in Delayed Benefit Services: A case study of electronic community currency in Japan
Shinichi KANEKIYO, Yasunobu ITO
・In: Christine Leitner, Jens Neuhüttler, Clara Bassano and Debra Satterfield (eds) The Human Side of Service Engineering. AHFE (2023) International Conference. AHFE Open Access, vol 108. AHFE International, USA. 108 123-129 2023年7月 (査読有)
・Value creation process in the start-up phase of a project in local community: A case study on the introduction of electronic local currency in Japan
Shinichi KANEKIYO, Yasunobu ITO
・Proceeding from the 5th Global Conference on Creating Value, Creating value through AI and digitalization 22-28 2022年9月3日(査読有)

【著書】
・NHKスペシャル取材班(2007)『新日鉄VSミタル』ダイヤモンド社(第2章、第7章、第8章分担執筆)

【主な制作番組】
・NHKスペシャル(2004年1月11日放送)『復活なるかニッポン半導体~密着 世界の壁に挑む男たち~』
・NHKスペシャル(2004年5月8日放送)『シリーズ 大欧州誕生 第1回 国境なき巨大市場~ヒト・モノ・カネの激流~』
・NHKスペシャル(2007年5月7日放送)『“敵対的買収”を防げ~新日鉄・トップの決断~』
・NHKスペシャル(2008年10月17日放送)『世界同時食糧危機 第1回 アメリカ頼みの“食”が破綻する』
・NHKスペシャル(2008年10月19日)『世界同時食糧危機 第2回 食糧争奪戦 ~輸入大国・日本の苦闘~』
社会活動、
     文化活動等

・山梨県広報コンクール映像部門審査委員(2020年度-現在)
・(株)山梨放送, 番組審議委員 (2021年7月-2022年6月)
・甲府市, 観光振興基本計画推進会議委員(副会長, 会長:2015年11月-現在)
・甲府市, 多文化共生推進委員会委員 (2018年6月-現在)
・山梨県, 動物愛護管理推進検討委員会委員 (2019年9月-2020年3月)
・山梨県, 高等学校審議会委員 (2018年6月-2019年7月)
・山梨県立甲府第一高等学校探究科「取材論」講義(2015年度-現在)
・山梨県立美術館・文学館に関する情報発信 (取材協力 2021年1月22日-現在)