英華字典特集




本学所蔵の『英華字典』(1866年−1868年刊行)




『訂増英華字典』(今野教授所蔵資料)




『西國立志編』(今野教授所蔵資料)




高橋是清へ送られた『訂増英華字典』の領収書
(今野教授所蔵資料)





<英華字典の展示風景>

英華字典についての解説(PDFファイル)

<葵文庫の英和辞典等の系譜サイト>

 

  ロプシャイト『英華字典』(English and Chinese Dictionary


                    本学言語教育研究所教授 今野真二


 「英華字典」「英華辞典」は、英語を見出し語とし、それを中国語で説明する辞典の一般称でもあるが、ここでは、Wilhelm Lobscheid1822〜没年未詳)の手になった『英華字典』を指すことにする。ロプシャイトの生涯に関しては、那須雅之「W.Lobscheid小伝−《英華字典》無序本とは何か−」(1995年『愛知大学文学論叢』第109輯)に詳しいが、日本では聖書の翻訳で知られているギュツラフとともに、1848年には香港でキリスト教の布教活動をおこなっていたこと、また18541月には中国語とドイツ語の通訳官としてペリーの艦隊に同行し、ペリーの江戸への入港(1854211日)とともに来日し、日本にも約半年間滞在したことなどが指摘されている。

  那須雅之「LOBSCHEIDの《英華字典》について−書誌学的研究(1)」(1997年『愛知大学文学論叢』第114輯)は、ロプシャイトの『英華字典』には序文のない「無序本」とそれが備わっている「序文本」(有序本)とがあること、また「序文本」であっても三種類の「序文」、すなわちPartTの扉の後にある「PREFACE」、それに続く張玉堂の漢文の序、PartWの扉の後にある「PREFACE」が揃った完本と、そうでないものとがあることを指摘している。

 今回清泉女子大学が所蔵したものは、PartTの刊年が1866年、PartUのそれは1867年、PartVは1868年、PartWは1869年とあり、上記の「無序本」にあたる。「呉蔵書」と背表紙下にある装幀の二冊本で、上下冊とも扉の右上部に「H.Ando」と(旧蔵者名と覚しき)ペン書きの署名がある。本文の状態はきわめて良好である。

 那須雅之(1997)は国内に現存する『英華字典』の所蔵状況を調査、報告しているが、それによれば(同氏の調査でわかったものとしては)大学では、大阪外国語大学(C380-414)、学習院大学(495-L786)、金沢大学(6-51-78)、群馬大学(833-L77(-1))、慶應義塾大学3部(D-16-15-2D-20-16-2D-1-22-2)、九州大学(英文筑紫文243-3)、筑波大学3部(E-100-248E-100-L-3582323-L77-1)、東京大学(D100-189)、東北大学(東北大学学術資料データベース研究会蔵本)、同志社大学2部(823.L14・新島旧邸蔵)、長崎大学(706-123-126)、名古屋大学(823-L173828)、奈良女子大学(153-46)、日本大学(87-0908-0911)、一橋大学2部(Ab-34Ab-21-14)、山口大学(101-29(立3-61))、北海道大学5部(423-L78-73423-L78-83423-L78-81423-L78-80423-L78-70)の17大学に合計27部所蔵されていることがわかっており、これに本学所蔵の1部が加わることになる。(括弧内は請求番号)他に公共、私設図書館に43部(うち34部は国立公文書館蔵)、研究機関、個人等で7部所蔵されていることがわかっており、(この他にも当然所蔵されている可能性がたかいが)現時点では77部に本学の1部が加えられて、78部が国内に現存していることになる。東北大学所蔵本はCD-ROM版として公刊されており、那須雅之氏蔵本は1996年に東京美華書院から複製として刊行されている。

 この『英華字典』をもとにして津田仙、柳沢信大、大井鎌吉合訳、中村正直校正『英華和訳大字典』(明治12 1879年刊)が出版され、また他の辞書も併せながら、羅布存徳(ロプシャイト)著、井上哲次郎訂増『増訂英華字典』(1883〜1884年刊)も出版されている。他にも、明治6(1873)年に刊行された柴田昌吉、子安峻『[附音/挿図]英和字彙』の編纂にも大きな影響を与えたこと、また中村正直訳『西国立志編』や『自由之理』、西周訳『利学』などの訳語に影響を与えていることも指摘されており、明治初期の翻訳書、英和辞書の研究には必見の重要な資料と位置付けられているが、『英華字典』を中心に据えた分析は今後の課題といえるかもしれない。 


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