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デジタルライブラリー

図書館報より抜粋した貴重書をご覧になれます。

アンヌ・ドートリッシュの時祷書

                                                                                                                                                                    解説  文学部元教授 荒木成子

 14・15世紀に時祷書(世俗の人のための祈祷書)のような書物(手写本)を持つことができたのは王侯貴族や上流市民など、ごく限られた人々であった。色鮮やかな装飾が施された書物は、私たちの眼から見れば立派な美術品である。二つと同じものがない、豪華な時祷書はいわばステータスシンボルとして、上流階級必携のアイテムであった。しかし、紙が普及し、印刷術が発明された15世紀の後半以降、手写本は次第に衰退してゆき、16世紀後半には活版本に取って代わられる。
 アンヌ・ドートリッシュの『時祷書』は100年戦争が終ろうとしていた15世紀半ばにパリで制作された。大きさは177mm x 121mm、子牛皮紙製で146葉からなり、20点の挿絵が挟み込まれている。聖母の時祷に関する八つの主題、<聖母子>、<エリザベツ訪問>、<神殿奉献>、<羊飼いのお告げ>、<マギの礼拝>、<幼児虐殺>、<エジプト逃避>、<聖母戴冠>は全頁挿絵となっており、他に<聖母子>と11点の聖人像の小挿絵がある。シンプルな風景や建築の中に控えめに描かれた人物たちは素朴な味わいを持ち、柔らかな色彩と共に、心和らぐようなやさしい印象を与える。注文主または最初の持ち主が誰であったかは不明である。
 その後、この時祷書はどういう経緯を経てか、フランス国王の所有となる。その時期に書物の冒頭に新たに4葉が加えられ、ルイ12世(1498‐1515在位)の紋章、さらに見開きの全ページ挿絵として国王の肖像と<受胎告知>の場面が描かれた。王冠を戴いた国王は柱の立ち並ぶ荘厳な礼拝堂で、堂々たるマントを着けて書見台の前に跪き、お告げを受ける聖母に向かって祈っている。跪くルイ12世の姿はもう一度繰り返して後の頁に描かれている。これらの挿絵は15世紀半ばの部分とはまったく異なるルネッサンス様式になっており、その力強い筆勢や、見事な三次元空間と陰影の表現は、この画家が王の肖像を描くに相応しい優れた腕前の持ち主であったことを示している。
 この書物はやがてルイ13世(1610‐43在位)の王妃、アンヌ・ドートリッシュ(1601‐66)の所有となる。表紙と裏表紙に王妃の紋章が金箔で型押しされており、現在の装幀が彼女の時代のものであることが分かる。この時期にさらに10葉が書物の最後部に付け加えられた。フランス王家に伝わる一冊の書物がその後多くの人の手を経て本学の所有となったことを思うと、不思議な感慨に誘われる。当時の装幀をそのまま残し、完全な形で残る一冊の写本は、それを眺める私たちに歴史や文化とりわけ美術について多くのことを語ってくれる。

大和物語鈔

 大和物語とは平安時代中期の歌物語であり、作者は不明。伊勢物語とともに歌物語の代表とされる。
内容は173段にわたる歌語りの集成である。前半は宇多天皇退位当時の宮廷に生まれた歌語りを主とし、後半は姥捨山、生田川説話などの伝承が多くとり入れられている。
伝本は、二条家本系統と六条家本系統とに大別される。前者に属する弘長元年写の藤原為家筆本が最善本とされており、従来流布した定家(ていか)本もおおむね二条家本である。
今回撮影した貴重書は、故高橋正治先生が所蔵されていた二条家本系統の伝為氏筆本大和物語系統に属する本文を持つ元和寛永頃の写本である。

ちびくろサンボ

本書は、1899年ロンドンのGrant Richards社によって出版された初版本である。
Helen Bannermanによって描かれたこの作品は、現在全世界で刊行されている
「ちびくろサンボ」の原型であり、初版本と現在刊行されている資料を比較することは資料の変遷を知るうえでとても貴重なことである。
近年この作品が“人種差別的”だとして糾弾され、物議をかもしだしていることは周知である。

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