篠原 厚子 教授

共通科目
Atsuko Shinohara
元素と健康の関わりを実験や解析により研究します
栄養として必要不可欠なミネラルから、産業分野で使われる毒性金属に至るさまざまな元素が、ヒトの健康に及ぼす影響について、実験や分析を行って研究している。


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 私は薬学の出身です。授業は毎日4限まで授業が詰まっており、午後の実習は5時までの予定が終わらずに延長することが常態で、レポート提出も義務だったので、平日は夜の家庭教師以外はほぼ自宅と大学の往復でした。殆どの授業は必修科目で単位を落とすと留年になるので、自主休講も滅多にしない真面目な学生生活でした。文系に進んだ友人の授業スケジュールとの違いに驚いた記憶があります。とはいえ、土曜日の午後と日曜日は友人たちとマメに遊び、長期の休みには、地方の友人宅に転がり込みながらの旅行にも行き、親からは丸一日家にいた試しがないと言われていました。大学院時代は、毎日夜まで実験や解析、学会参加、論文作成、日曜は家庭教師、長期休暇は塾講師で授業料を稼ぎ、1週間ほど旅行、というある意味単調な生活でした。打ち込んだことは強いて言えば実験です。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 薬学に進んだ理由は薬剤師の資格を取得して自分で食べていける人になるためでした。しかし、卒論研究をしているうちに、実験や研究の面白さに惹かれ大学院に進学しました。修了後、何年間かは無給助手でしたが、その後、有給の教員になることができ研究を続けることができました。専門は広く言えば環境衛生、具体的なテーマは希土類元素の生体影響、および微量元素の過不足が健康に及ぼす影響です。特に希土類元素はさまざまな先端材料や医療関係で用いられる元素ですが、生体影響に関する情報が少ないことから興味を持って取組み始め、長年研究を継続してきました。大学院時代に専攻した分析化学の知識を使い、実験動物をモデルとして元素の体内動態を研究し、ヒトの健康に役立つ基礎データを得ることを目的としています。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 科学研究の面白さについて思うこと。いろいろな物質の作用や性質を実験で調べて、今まで知られていなかったことが見つかることが一番の魅力です。たとえ小さいことでも、それらの積み重ねが情報となり科学の発展に何らかの寄与をすると思えるから。しかし、未知であったことが明らかになると、これまで信じられてきた定説が変わることもあり、教科書に書いてあることが正しいとは限らないこともあります。研究の成果は、様々な事象の危険性や安全性を評価する助けとなる反面、使い方次第では生物や地球に害を及ぼすものにもなりうるので、面白いが難しい。
shinohara_sensei

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 私の学生時代は大学滞在時間がかなり長かったですが、それでも、合間をぬって外へ出かけていろいろな人と出会いました。文系の大学は、学生自身が使い方を決めることのできる時間が理系に比べて長いので、興味に従ってアレンジ可能です。どう使うかはその人次第ですが、是非多くの人と出会い、さまざまな体験をし、試行錯誤し、悩んで、充実した大学生活を送っていただきたいと願います。大学の4年間は、社会に出て行く前の準備段階で、大人としての行動を身に付け、自分の将来を考える大切な時期です。どのような体験も、嬉しい心躍る体験はもちろんですが、たとえ失敗や挫折であっても、将来のあなたのために無駄にはならない、ということを心に留めておいてください。

教員紹介


氏名
篠原 厚子
フリガナ
シノハラ アツコ
職種
教授
所属
人文科学研究所
取得学位
薬学博士
学位取得大学
東京薬科大学大学院
最終学歴
東京薬科大学薬学研究科博士後期課程修了
専門分野
健康科学・分析化学
研究テーマ
生体必須元素の過不足による健康障害を実験動物を用いて研究。産業分野で使用される希有元素の、曝露形態別の体内取り込み、体内挙動、および生体影響の研究。栄養や環境衛生をキーワードとした健康教育の効果的な実践を検討。
所属学会(役職)
及び受賞歴
日本衛生学会(評議員)
日本微量元素学会(評議員)
日本産業衛生学会(関東支部幹事)
プラズマ分光分析研究会(世話人)
主要業績
・Shinohara A, Chiba M, Inaba Y, Distribution of rare earths in liver of mice administered with chloride compounds of 12 rare earths, Materials Science Forum Vols 315-317(1999):368-372, 1999.
・Shinohara A, Chiba M, Inaba Y, Determination of Ge in human specimens: Comparative study of AAS and microwave induced-plasma mass spectrometry, J Anal Toxicol 23:625-631, 1999.
・Shinohara A, Chiba M, Inaba Y, Determination of trace levels of rare earth elements in organs of mice by Microwave-induced plasma mass spectrometry, Anal Sci 17:i1539-1541, 2001
・Shinohara A, Chiba M, and Inaba Y, Comparative study of the behavior of terbium, samarium, and ytterbium intravenously administered in mice, Materials Science Forum 408-412:405-408, 2006
・A. Shinohara, M. Chiba and T. Kumasaka, Behavior of samarium inhalated by mice-exposure length and time-dependent change. J. Radioanal. Nuclear Chem., Vol.281:119-122, 2009.
・Shinohara A, Matsukawa T, Chiba M, Kumasaka T, Kobayashi J, Takamori K, Ichinose S, Yokoyama K, Comparative study of behavior of inhaled samarium and cerium in mice, J. Rare Earth, .28,:507-509, 2010