中野渡 俊治 教授

文化史学科(2025年度より総合文化学科)
Shunji Nakanowatari
奈良・平安時代の天皇について研究します
日本古代史について、譲位した天皇である太上天皇に関する研究を中心として、天皇位の正当性の問題や、天皇と臣下との関係などを考察しています


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 今のようにインターネットなどで情報が簡単に手に入るようではなかった時代、大学の図書館は、知りたいことが何でも(は言い過ぎか)分かる夢のような空間でした。高校の時まで、何か本を読んでいてその先のことを知りたくても手がかりがなくて、もどかしい思いをしていたのが、大学の図書館に行くと次々と文献が見つかるのが新鮮な感覚でした。なので、図書館のあちこちをさまよって、専攻分野に限らずさまざまな分野の本を手に取ることを繰り返していました。
 もう一つ、私はクラシック音楽を聴くのが好きなのですが、地方から東京の大学に出てきたこともあって、よくコンサートに通っていました。学生なので行ける機会は限られましたが、あのとき熱心に通って聴いたコンサートの数々は、今でも強烈な想い出になっています。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 小さいころから何となく「昔のこと」に興味があって、小中高の社会科や歴史の時間は好きでした。両親に京都や奈良に連れて行ってもらったこともあって、古代史に惹かれていったのかもしれません。そんななか、高校生のころに天皇の代替わりがあり、そのニュースやさまざまな議論を目にしているうちに、君主制や国家の支配機構について関心を持ち始めました。
 大学に入って、古代史ゼミの史料講読で「太上天皇」が出てくる記事を担当したりしているうちに、ヨーロッパなどの君主が「退位」するのとは違う「前天皇」の存在に関心を持つようになり、古代の太上天皇を卒業論文のテーマに選び、結局それがその後の研究課題ともなりました。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 日本の天皇はなぜ途中で譲位したのでしょうか?。譲位して天皇ではなくなったとしても、「太上天皇」であり「前天皇」なのですから、それまでの臣下たちも様々な思惑をもって、「前天皇」と接するようになります。一つ一つの実例を追っていくと、多くのドラマがあり、その意味や背景を考えていくのは面白いことです。一千年以上前のことといえども、同じ人間の営み。さまざまな史料を読み解き、読み比べることで、当時の人たちの思いや行動に迫ることができるのが魅力です。
 漢字だけが並んでいるような漢文史料は、一見しただけですらすら読めるとは限りません。辞書(漢和辞典など)を引き引き、内容を考え、意味が通ったときは、何か楽しさを感じることがあります。

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 学生の時期は、まだ何をやりたいのか、具体的に決まっていない分、何にでも取り組める時期でもあります。試行錯誤を繰り返すことができるのも学生のうちです。研究でもサークル活動でも、社会との繋がりでも、いろいろなことに目を向けてみてください。
 もう一つ、図書館などで本を手にとって、読んでみましょう。検索語を入れて自分が今欲しい情報だけを手に入れるのではなく、さまざまな分野の本に目を通すことによって、視野は広がります。また文章を読むことに慣れるということは、文章を書く力にもつながります。いろいろなことに取り組んでみるのに加えて、本を手にとるということも意識してみてください。

教員紹介


氏名
中野渡 俊治
フリガナ
ナカノワタリ シュンジ
職種
教授
所属
文化史学科(2025年度より総合文化学科)
取得学位
博士(文学)
学位取得大学
東北大学
最終学歴
東北大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学
専門分野
日本古代史
研究テーマ
古代の天皇制について、譲位した天皇である太上天皇の存在を軸として研究を進めている。
前天皇としての太上天皇と天皇との関係、また天皇を支える貴族たちとの関係から、奈良時代から平安時代にかけての、天皇位の正当性の問題や、貴族たちとの関係の解明を目指している。
所属学会(役職)
及び受賞歴
史学会
日本史研究会
大阪歴史学会
東北史学会
木簡学会
主要業績
・『小右記註釈 長元四年』(共著 黒板伸夫監修・三橋正編 小右記講読会 2008年)
・「法人化と将来構想」(『東北大学百年史二 通史二』東北大学出版会 2009年)
・『古代太上天皇の研究』(思文閣出版 2017年)
・「改元と天皇制」(『テーマで学ぶ日本古代史 社会・史料編』吉川弘文館 2020年)
・「桓武天皇と酒人内親王」(『恋する日本史』吉川弘文館 2021年)
・「藤原北家」『古代史講義【氏族篇】』( 筑摩書房2021年)
社会活動、
文化活動等

・「奈良・平安時代の太上天皇」(皇學館大学研究開発推進センター神道研究所公開学術講演会2019年7月)
・「洛西・大原野社と藤原氏」(京都府立京都学・歴彩館「京都を学ぶセミナー【洛西編】」2021年3月)
・「奈良の都・平城京の諸相」(清泉ラファエラ・アカデミア講座2022年1月)
・「古代日本の年号と改元」(土曜自由大学2022年5月)