藤井 由紀子 教授

日本語日本文学科
藤井由紀子准教授
平安時代の作り物語を研究します
主な研究対象は平安時代の物語文学。鎌倉・室町時代の物語も視野に入れ、『源氏物語』という文化現象を文学史的にどのように位置づけるべきかを考えている。


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

​ 高校生のときには野球部のマネージャーをやっていて、明けても暮れても部活動でした。大学に入ってからも、少しだけ軟式野球部を覗いたりもしたのですが、あまりにも高校時代の部活動が楽しすぎた反動で、まったくのめり込むことができませんでした。なので、大学時代に、これといって打ち込んだことはないのです。授業にもそれほど真面目に参加せず、アルバイトばかりしていたような学生生活でした。
 ただ、楽しかったのは、大学三、四年生の頃に、同じ専攻の友達がたくさん私の家に集まってきて、みんなでごはんを食べたり、朝まで飲んだりして、いろんなことを話したこと。くだらないことで盛り上がっていた反面、お互いに将来何になりたいかを真剣に話し合ったりもして、そこで初めて、素の自分をさらけ出しても大丈夫な仲間に出会えた気がします。今振り返れば、学生時代だからこそ持てた、貴重な時間だったと思います。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 ​ 私の専門は『源氏物語』ですが、『源氏物語』の現代語訳は中学生の頃から読んでいて、とりわけ田辺聖子『新源氏物語』にハマって、「将来は国文学者になる!」とひそかに決心していました。ただ、高校生になってからは、先にも述べた通り、部活動一色で、読書もほとんどしていなかったし、なにより、古文の授業があまりおもしろくなくて、成績もそれほど良くない状態。志望校を真剣に考える段になって、こんな古文の成績で、大学に入ってほんとうに『源氏物語』がやれるのか、と考えたりもしました。それでもやっぱり好きなものは好き、初志貫徹で行こうと決めて、『源氏物語』をやっている先生がいる大学を探して第一志望に決めたのが、今の研究につながる第一歩だったと思います。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 「古典文学」というと、どうしても難しい、堅苦しいイメージがありますが、今から千年も前にできた作品が現在まで残っているという、その事実だけでも感動できることです。実際に、平安時代には、非常に多くの物語が書かれたり読まれたりしていたようですが、その中で現存しているのは、ほんの数編のみ。今残っている作品は、「おもしろい」からこそ、多くの人が読み継ぎ、書き写した、まさに選ばれし作品なのです。『源氏物語』は、その「おもしろさ」の頂点に位置する作品だと言ってよいでしょう。なぜこれほどまでに『源氏物語』がウケたのか、その理由を探ることで、人はなぜ「物語」を必要とするのかという普遍的な問題に対するひとつの答えが見えてくるのでは、と考えています。
fujii_sensei

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

​  大学生のときに付き合っていた経済学部の彼氏から、「文学部なんて行く意味がない。家政科に行くべきだ」と言われて、もうこの人とはやっていけない、と思ったことがありました。いや、個人的なことを言えば、私は家事がとても苦手なので、家政科で学ぶ技術が有用であることに反論はしません。ただ、文学部に「意味がない」わけでは絶対にないと、二十年以上経った今、より強く思います。
 たしかに、古典文学の研究なんて、それ自体は実社会では何の役にも立ちません。しかし、私が学生に教えているのは、対象を正確に把握すること(古文を原文で読むこと)、その中から自分で問題を探し出すこと(レポートや卒論のテーマの設定)、自分の主観を裏付ける客観的な証拠を見つけること(用例調査など)、その結果を論理的に構築して相手を説得すること(レポートや卒論の作成)です。これは、将来、どんな生き方をしても役に立つ技術だと、胸を張ってほしいと思っています。

教員紹介


氏名
藤井 由紀子
フリガナ
フジイ ユキコ
職種
教授
所属
日本語日本文学科
取得学位
博士(文学)
学位取得大学
大阪大学
最終学歴大阪大学大学院博士後期課程(文学研究科 文化表現論専攻)修了
専門分野
日本中古文学、物語文学
研究テーマ
『源氏物語』を始めとする平安~室町期成立の物語文学の研究。近年は、『源氏物語』以後の物語の表現史的位置づけの考究を研究テーマとしている。
所属学会(役職)
及び受賞歴
中古文学会
ヨーロッパ日本学会(EAJS)
主要業績
【著書】
・『兵部卿物語全釈』※「注釈」「評」「解説」を担当 共編  武蔵野書院 2019年2月
・『異貌の『源氏物語』』単著(272頁)武蔵野書院 2021年5月

【論文】
・「柏木の猫の夢」(『国語国文』77-2)2008年2月
・「原動力としての『源氏物語』」(『国語と国文学』86-12)2009年12月
・「『兵部卿物語』の創作手法」(『国語国文』80-8) 2011年8月
・「光源氏の「日記」考」(『文学』 16-1)2015年1月
・「藤壺の宮の「女心」」(『中古文学』96)2015年12月
社会活動、
文化活動等

・よみうり文化センター(大阪天満橋校) 講座 「源氏物語を読む」 講師 2005年2月~2008年9月
・伊丹市立中央公民館 講座 「「源氏物語」の世界へようこそ」 講師 2007年10月~2009年9月
・香芝市民図書館 文学講座 「源氏物語入門」 講師 2008年10月~2009年2月