清泉女子大学

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新入生の皆さんへの学長メッセージ

佐伯学長

 新入生の皆さん、御入学、おめでとうございます。新入生の保護者、御家族の皆様、お嬢様の御入学、誠におめでとうございます。新入生の皆さんを心から歓迎致します。
 この春、清泉女子大学に入学なさるのは、大学院が修士課程の言語文化専攻1名、思想文化専攻1名の計2名、文学部の1年生は、日本語日本文学科91名、英語英文学科105名、スペイン語スペイン文学科53名、文化史学科101名、地球市民学科67名の計417名、2年次への編入学者が、英語英文学科1名、スペイン語スペイン文学科が1名、地球市民学科2名で合計4名、3年次への編入学者が、日本語日本文学科2名、英語英文学科3名、地球市民学科1名で合計6名、学部は合計427名、大学院と合わせて全部で429名の方達です。

 まずは、今回例年のような、きちんとした入学式を行えないことを、新入生の皆さんと保護者の方々へ、全教職員を代表して、深くお詫(わ)びを申し上げます。御存じの通り日本全国、特に首都圏が新型コロナウイルス感染症流行のため大変な事態になっております。大学として、新入生に恙(つつが)なく大学生活を始めてもらうため、感染リスクを極力抑えるための已(や)むを得ない処置ですので、何卒御理解願います。

 清泉女子大学は、スペインから来日した、聖心侍女修道会のシスター方により設立され、創立70年目を迎えます。キリスト教ヒューマニズムの下(もと)、「一人ひとりを大事に」することを建学の理念としています。少人数教育の形で、社会で自立した女性として、主体的に考えて活躍できる女性、自分のことだけでなく周囲のことも考える奉仕の精神を持った女性の育成を目指し、全教職員が熱意と愛情をもって教育に当たっています。

 清泉女子大学は、キリスト教ヒューマニズムの下、「まことの知、まことの愛(VERITAS et CARITAS)」の追究をモットーとしています。「まことの愛」は、先程申したように自分のことだけでなく他者のことを思いやる奉仕の精神や、グローバル化の進む社会の中で、他文化、他民族の多様性を理解し、尊重し合い、共生する精神のことです。「まことの知」とは、教養と知性を身につけ、自己を知ることです。自国の文化を知らなければ、他国の文化を理解することはできません。また、冷静に状況を見極めて判断できる理性を備え、「自己」というものをしっかりと確立していなければ、真に他者に優しくはなれません。自分のない人が他人に合わせようとすると、往々にしてただ流されてしまいます。知性ある「自己」というものを確立できている人が、真に他者に優しくなれるのです。清泉女子大学は、建学以来、知性と優しさを備えた女性の育成を教育目的として掲げています。

 そこで、新入生の皆さんに、私から是非お願いしたいことがあります。それは、「出会い」を大切に考えて、出会った多くのものと、真剣に向き合って欲しい、ということです。多くのものと出会えるように、是非意識して、積極的、行動的な学生生活を送って下さい。大学時代は人生で最も自由で溌剌(はつらつ)とした時期ですが、ただ待っていては、貴重な出会いを持てぬまま、あっという間に学生時代が過ぎてしまいます。「出会い」と言っても、色々あります。大学での学問との出会い、自分の生き方に大きな影響を与える「本」や「恩師」との出会い、一生の宝となる「友」との出会い、そして、今はまだ皆さん自身が気付いていないような「自分」自身との出会いなどです。

 皆さんも本学との出会いと決断があって、今ここにおられる訳ですけれども、大学に入ると、今迄より大きく世界が広がります。色々な面で、学内・学外の両方で、自分なりの沢山の出会いを持てる、それが、皆さんの目の前に広がる大学生活です。

 「自分との出会い」ということについても、お話しします。皆さんの中には、「自分なんてどうせ大したことない」と、変に自分を見切ってしまっている方がおられるやもしれません。しかし、はっきり言って、それは間違いです。筑波大学名誉教授で遺伝子工学の権威である村上和雄氏は御著書の中で、こう書いておられます。人間の体は60兆もの細胞から成り、細胞ごとの核の中の遺伝子DNAには、30億もの遺伝子情報が詰まっている。ところが、僅(わず)か数パーセントの機能しか働いておらず、他の部分はオフになり働いていない。環境や物の見方・考え方によって、遺伝子情報の機能のオンとオフは切り替わる。よって、決して自分はダメだと諦めたりせず、全て前向きに考えて、自分の可能性を信じ、「できる」と思ってやってみることが何より大事だとお書きです。全く同感です。出会いを活かすには、自分を信じ、かつ出会った対象と真剣に向き合うことが重要です。

 清泉女子大学は、文学部の単科大学であり、女子大です。文学部での学びのうち、語学は外国人とのコミュニケーションスキルとなりますが、文学や歴史、哲学、美術などは、実学でなく、勉強しても社会に出てから役に立たないなどと思ってはいませんか。それは短絡的な、近視眼的な見方です。文学は、言語表現を主に扱います。かつ、いずれも人間とは何かという探求に繫(つな)がるものです。人間は誰しも、言語を通じて思考し、言語を通じて他者との意思の疎通を図ります。芥川賞作家の日野啓三氏の著述に拠ると、読み書きのできなかったおばあさんが読み書きを習ったあと、「私は今まで夕焼けがこんなに美しいものとは知らなかった」と言われたそうです。このように言語は「考える」ことや「物を見る、物を知る」ことの基盤なのです。また、社会に出てどのような職業に就くにしても、又どのような生活を送るにしても、多くの人間と関わり、交渉したり協力したりすることが不可欠です。文学の学びは、一生涯の節目(ふしめ)節目で必ず活きてきます。

 加えて、本学は少人数教育の中で、演習、ゼミナール形式の授業を重視しています。演習形式の授業は、教員が一方的に講義するのではなく、学生がそれぞれ事前に調べて考察したことを、資料を作って発表し、それを聞いた他の受講生や教員からの質問に答える質疑応答を行います。卒業論文を書く場合には、自らテーマを考え、指導教員の助言・指導を受けつつも、自分で資料・文献を集めて、分析と考察を加え、未解決の問題について答えを導いていきます。これは、社会での、あらゆる職業・活動とも通じる事柄です。

 更に、少子高齢化が急速に進む日本社会では、今後益々女性の社会的な活躍の機会が広がって行くに違いありません。にも拘(かかわ)らず、今の日本は、残念ながら男女機会均等はなお道半ばです。他の大学で起きた入試における不当な女子差別などの報道に接すると、同じ大学人として、憤りを感じると共に情けない思いです。そのような日本では、女子大で学ぶ意義は未だ大きいと言えます。授業でもサークルでも、男性に頼ったり遠慮したりすることなく、女子学生自身がリーダーシップを取り、重要な役割を各人が主体的に果たします。その経験が、皆さんを大いに成長させます。かつ、世界で国連の提唱するSDGsや、ESGが注目されています。本学で共生の理念について学び、女性の自立のための素養を醸成することは皆さんの今後の人生の確実な礎(いしずえ)となります。

 本学の就職率が最新のデータで97%以上と非常に高いのは、大学のブランドイメージや就職課のきめ細やかな就職支援だけでなく、本学が本質的なことを誠実に教育し得ている成果だと自負しています。就職はゴール・目的ではありません。どのような道に進むにしろ、自己実現と社会貢献を果たすことによって、一人ひとりが充実した人生を送ることが大事です。清泉女子大学では、本質的なものと向き合い、学ぶことができます。どうか、自らの持つ可能性を信じ、卒業時・修了時にどのような自分になりたいかという目的意識をしっかり持って、学生生活を送って下さい。

 今から広がる学生生活において、多くと出会い、多くと真剣に向き合うことを、皆さんにお願いしました。そうしたことで、どんどん自分の世界が広がります。卒業時・修了時に皆さんが、どのように成長した自分と出会えるか――我々教職員は大いに期待し、かつ全力でサポートして参ります。

 改めまして、本日は御入学、おめでとうございます。

 

令和2年4月2日

清泉女子大学学長 佐伯孝弘

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