思想文化専攻(修士課程)

清泉女子大学大学院思想文化専攻についてのご紹介です。



思想文化専攻の特徴

人間の思考活動から生みだされた文化について、
哲学・思想史、宗教学・宗教史学、美術史学(日本・東洋・西洋)、
文化史学(日本・東洋・西洋)の4つの領域において研究を深めます。

思想文化専攻では、人間の思考活動を基盤に形成された思想文化に関する研究と教育を行います。その核となる学問領域は、哲学・思想史学、宗教学・宗教史学、美術史学(日本・東洋・西洋)および文化史学(日本・東洋・西洋)の4分野です。これらの分野において専門的研究に取り組むとともに、他分野との交流を通して、幅広い知識と視野を獲得し、専門領域の研究をいっそう深く追求します。

思想文化専攻の目的

  1. すぐれた専門知識を有し、学校教育、社会教育において指導的立場で活躍できる人材の育成。
  2. 美術館・博物館等の活動に従事できる高度な能力を有した職業人の育成。
  3. 豊かな学識、しなやかな知性、みずから考える力を身につけた人材の育成。

思想文化専攻概要

科目構成

●必修科目
思想文化総合演習
修士論文指導
●選択科目
キリスト教思想演習
宗教史学演習
西洋哲学演習
日本文化史学演習
東洋文化史学演習
西洋文化史学演習
美術史学演習
キリスト教思想特殊研究

宗教史学特殊研究
西洋哲学特殊研究
日本文化史学特殊研究
東洋文化史学特殊研究
西洋文化史学特殊研究
西洋美術史学特殊研究
日本美術史学特殊研究
東洋美術史学特殊研究

取得可能な資格

※専修免許状の取得には、希望する教科の一種免許状を取得していることが条件となります。
  • 中学校教諭専修免許状:社会、宗教
  • 高等学校教諭専修免許状:地理歴史、公民、宗教

修士論文のテーマ

全てを開く
哲学・思想史学
  • キルケゴールの思想から読み解く「信仰」と救い−宗教と倫理のはざま
  • 自我のアイデンティティとペルソナ―フェルナンド・ペソアからの考察―
  • エマニュエル・レヴィナス『存在の彼方へ』における〈語ること(le Dir)〉と〈語られたこと(le Dit)〉
  • メルロ=ポンティ『知覚の現象学』における自己と世界の関係について
宗教学・宗教史学
  • 青森県における戦後の死者供養について・地方紙から
  • キリスト教音楽の転換期―マルティン・ルターの音楽改革から―
  • 聖性とセクシュアリティ―古代宗教における処女性と母性の再考―
  • ヨーロッパのキリスト教における女性観―魔女概念を手掛かりに考察する―
  • 賢者の石とは何か―錬金術に貢献した二人の賢人より考察する―
  • 『ベネディクトゥス戒律』におけるベネディクトゥスの理想
  • 日本キリシタンの殉教―印刷機導入による殉教拡大の可能性―
  • 近世初期における仏教治国論と島原の乱―鈴木正三・重成を中心に―
  • 16世紀ペルーにおける初期キリスト教宣教―教会文書に見られるラス・カサスの精神―
  • 古代メソポタミアにおける都市・王権・神―随獣ムシュフシュの視点から―
美術史学
  • 第一次世界大戦におけるイギリスのプロパガンダ―ウェリントン・ハウスと『ブライス・レポート』を中心に―
  • 長崎に生きた倉場富三郎―日英混血児の葛藤と絶望―
  • 関東大震災における救援について―関西府県連合震災救護事務所の救援と「関西村」を中心に―
  • 日朝修好条規にみる日本の朝鮮政策―第一款「自主ノ邦」の文言に就いて―
  • 15世紀後半ネーデルラントにおけるブルゴーニュ公の都市支配と儀礼―シャルル突進公の結婚セレモニー(1468年、ブルッヘ)を中心に―
  • 19世紀ヨーロッパのジュエリーの意味と目的
  • 仙台藩と明治維新
  • 水戸学を中心とする前近代的ナショナリズムの研究
  • 近世欧州でレースはどのように作られ、どのように用いられたか Comment on produisait et comment on utilisait la dentelle en Europe moderne
  • ロシア人宣教師ニコライと明治日本
  • 製法書にみる近世の菓子文化―色付けに使われた材料を中心に―
  • 覚厳法眼と明恵
文化史学
  • マリー・ローランサンの作風変遷―肖像画と自画像を中心に―
  • 藤田嗣治の戦争画―西洋画からの影響―
  • 明治期における菱田春草と朦朧体―その評価にまつわる一考察―
  • 仁寿殿観音供と二間観音像について―東寺二間観音像を中心に―
  • 東国における運慶派の十二神将像の展開について-新開院像を中心に-
  • ジョット・ディ・ボンドーネ作《オニサンティの聖母》-天使と諸聖人にみる図像的特異と革新性―
  • イングランド王リチャード2世の可視化する身体-《ウィルトン・ディプティック》を中心に-
  • ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの《本を読むマグダラのマリア》-なぜマグダラのマリアは本を読む姿で描かれたのか-
  • 一具像中にみられる鉈彫り表現の意味―千葉・妙楽寺大日如来像・不動明王像・毘沙門天像を中心に―
  • J. E. ミレイの子どもの絵と唯美主義―《秋の枯葉》からファンシー・ピクチャーまで―
  • 平安時代前期の地方造像の展開―長野市松代町・清水寺諸像を中心に―
  • タピスリー《貴婦人と一角獣》に描かれた聖と俗―モチーフからの考察―
  • 《アルノルフィーニ夫妻の肖像》の鏡―鋸歯状の形とメダイヨン装飾の意味―
  •  明治・大正期におけるオーブリー・ビアズリー受容―恩地孝四郎と田中恭吉を中心として―
  • エドガー・ドガの裸体画の変遷について―第8回展を中心として―
  • ペーテル・パウル・ルーベンス作《ヴィーナスの祝祭》について
  • 平安時代末期の東北地方仏像彫刻の様式展開―鎌倉新様式への進取性を中心に―

専任教員一覧

大井 知範 教授

【専門分野】
西洋近代史、国際関係史
【研究テーマ】
ドイツとオーストリア(ハプスブルク帝国)の近代史を主たる専門とする。特に19世紀中葉から20世紀前半に至る両国の政治外交、軍事、科学、文化、思想が海外世界へ向かう動きに関心を向けている。これら後発の中欧諸国は帝国主義の世界をどのように眺め、いかなる形でそれに関わろうとしていたのか。こうした課題を探究するなかで、ヨーロッパと海外世界を結びつけた近代グローバリゼーションの解明に取り組んでいる。

木川 弘美 教授

【専門分野】
西洋美術史
【研究テーマ】
近世(ルネサンス)以降の西洋美術を専門としている。主たる分野は、15世紀のネーデルラント(フランドル)絵画史で、宗教画を中心としたモチーフの研究を行っている。アルプス以北のルネサンスが、イタリアとどのような相互関係にあったのか、具体的な作例を分析しながら考察をすすめている。古典古代の復興という点から、ギリシア・ローマ美術、新古典主義なども視野に入れつつ、多角的に芸術をとらえる試みを行っている。

佐々木 守俊 教授

【専門分野】
日本美術史
【研究テーマ】
おもに平安~鎌倉時代の仏像や版画を対象とし、作品をとりまく人間関係や社会的・宗教的環境、特に中国からの影響を考慮しつつ、それらがつくられた事情や期待された役割をあきらかにすることを目標に研究している。特に近年は、仏像の内部空間に納入されたさまざまな物品を手がかりに、人々が仏像になにを期待したかを考察の主眼としている。このほか浮世絵をはじめとする近世絵画にも関心があり、仏教美術と同様、「東アジアのなかの日本」という観点から作品の歴史的意義を問うている。

鈴木 崇夫 教授

【専門分野】
哲学、倫理学、西洋思想史
【研究テーマ】
生命倫理との取り組みを経て、「よく生きる」とはどういうことなのかという哲学の初発の問題にあらためて焦点を合わせている。規範の超越性を機軸に据えたカント哲学と、コナトゥス原理の内在性に徹したスピノザ哲学との異同について、しばらく考えてきた。現在では、両哲学を視野に収めながらそれぞれ独自の思想を展開した「ドイツ観念論」の哲学者たちに即して、超越性と内在性との関係について思索をめぐらしている。

竹田 文彦 教授

【専門分野】
キリスト教神学(特に、歴史神学(キリスト教思想史、教会史、教父学)、霊性神学、東方キリスト教学
【研究テーマ】
ギリシア語、ラテン語のみならず、イエスや弟子たちが話したとされるアラム語の一方言であるシリア語で書かれた初期キリスト教著作家たちの文書を読み解きながら古代地中海世界におけるヘブライズムとヘレニズムの緊張関係の中で成立したキリスト教の思想的特質について研究している。

中野渡 俊治 教授

【専門分野】
日本古代史
【研究テーマ】
古代の天皇制について、太上天皇の位置づけや、臣下から天皇への上表文の分析などを中心として研究を進めており、前天皇としての太上天皇と天皇との関係や、天皇を支える貴族たちとの関係からの、天皇位の正当性や天皇と臣下との関係の解明を課題としている。
また近年は、藤原氏の存在を視野に入れながら、天皇・太上天皇と藤原摂関家・摂関政治との関係など、古代国家における王権構造に関する研究を進めている。

石野 一晴 准教授

【専門分野】
東洋史
【研究テーマ】
専門は東洋史。主に中国史上における巡礼と社会を研究している。中国民衆は様々な神を信仰していたが、霊験あらたかな神を祀る寺廟にはとりわけ多くの民衆が押し寄せた。著名な聖地には年間百万人を超える巡礼者が集い、その光景は様々な記録に残されている。現在は文献史学の立場から聖地をめぐる多種多様な典籍史料・石刻史料を読み込みながら、巡礼という社会現象の背後にある中国社会の歴史的特質について考察を続けている。

井上 まどか 准教授

【専門分野】
近現代ロシアの宗教史
【研究テーマ】
近現代ロシアの宗教史を専門とする。近代ロシアにおいて宗教思想はどのように構築されたのか。現代ロシアにおいて宗教はどのような社会的役割を求められているのか。これらについて官僚、聖職者、俗人の思想家、信仰者の言論活動の場に注目して研究を進めている。近年はソ連崩壊後のロシア正教会の教育・医療・福祉活動を中心に考察を行なっている。近現代のロシア社会における宗教について他地域との比較を念頭に置いている。

坂田 奈々絵 准教授

【専門分野】
キリスト教思想史
【研究テーマ】
中世キリスト教思想における美の意義とその解釈を中心的テーマとし、特に教父思想とその受容の観点から研究を進めている。具体的には、12世紀のサン・ドニのシュジェールの思想を中心とし、古代末期から中世前期のキリスト教思想に見られる美や光の概念や聖書解釈理論が、シュジェールの時代においてどのように受容され、また変化したのかという点について扱ってきた。また最近では、東西修道制における涙の解釈について、古代末期から中世盛期のテキストを渉猟している。

福留 真紀 准教授

【専門分野】
日本近世史

【研究テーマ】
日本近世政治史が専門。「江戸時代をどのようにとらえるか」という命題に「人」にこだわって向き合っている。歴史を紡ぎ出しているのは「人」。政治を行う主体・基盤は「人」。なかでも注目してきたのが「将軍側近」である。将軍が権威を発揮するのみの存在だったのか、あるいは政治的手腕を自ら示したのか。という将軍のあり様を、その側近が政治向きにどのように関与しているか検討することで解き明かし、徳川政治の本質に迫る。


桃井 治郎 准教授

【専門分野】
西洋史、マグレブ地域研究、平和学
【研究テーマ】
北アフリカのマグレブ地域を中心に地中海世界の歴史を学んでいる。専門研究は、18世紀末から19世紀初頭にかけてのオスマン帝国アルジェ領、チュニス領とヨーロッパ諸国との関係史である。同時期における北アフリカの「海賊」をめぐる外交史を通して、近代国際秩序の形成史を研究している。従来とは異なる視点から西洋史を再読することを課題としている。また、もう一つの研究テーマとして、現代のテロリズム問題に関心を持ち、歴史的および思想史的アプローチから暴力の連鎖に抗する平和の思想を探究している。