福留 真紀 准教授

文化史学科(2025年度より総合文化学科)
fukutome
徳川政治について、読み解きます
日本近世政治史。政治史というと、政策や法令の研究だと思われがちですが、研究の対象とするのは「人」。特に、将軍側近の存在に注目しています。

教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 大学では、日本中世史と近世史の2つのゼミに所属していました。中世史のゼミでは、まだゼミ所属ではない2年生の頃から、研修旅行に参加していました。京都・奈良・鎌倉などに行きましたが、特に印象に残っているのは、京都の醍醐寺の史料調査を見学し、上醍醐に宿泊したこと、奈良の今井町や天理の街を訪れたことです。本や史料を分析するだけでなく、その場に立つことの重要性と楽しさを学びました。
 ほかに熱中していたのは、アマチュアオーケストラの活動です。週に1回、上野の東京文化会館に通って、ヴァイオリンを弾いていました。毎年年末の第九の演奏会も楽しみでしたが、一番の思い出は、大学1年生の時の定期演奏会でのマーラーの交響曲第2番「復活」です。難しくて必死で練習しながら、曲の壮大さに圧倒され、マーラーが大好きになりました。


Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 本が好きな子供でした。家に和歌森太郎・尾崎士郎著『少年少女 日本歴史全集』集英社(全12冊)があり、それを繰り返し読んでいるうちに、歴史の流れがなんとなく頭に入ってしまい、小学校で歴史を習う頃には、授業で教わることがよくわかり、「遊びの延長が勉強につながった」感じでした。
 小学校高学年の頃にテレビで見た年末時代劇「忠臣蔵」も、私に強い印象を残しました。見終わったとき、「なぜ家族や恋人を置いて、殿様のために死んでしまうのだろう」という疑問が浮かびました。泉岳寺に足を運んだり、歌舞伎を見たり、色々な本を読みながら、だんだん歴史の真実とフィクションの二つの世界があることに気付き始めたのです。高校生の時には、史学科に進んで、日本近世史の研究者になりたいと思っていました。
 今も、夢中になって歴史の本を読んでいた子供のころの延長線上にいる気がします。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 政治史というと、政策や法令を研究しているように思われがちなのですが、私がこだわるのは「人」です。当たり前のことですが、歴史を紡ぎ出しているのは「人」、政治を行う主体・基盤は「人」だからです。その中で特に、江戸時代の徳川幕府の政治史を見通すことができる存在として注目してきたのが、「将軍側近」です。彼らの権力がどのようなもので、いかに変遷してきたか分析することで、それぞれの将軍の姿が浮かび上がり、おのずと幕府政治権力の全貌が見えてきます。これまで史料探索のために、日本各地を旅してきました。史料との出会いだけでなく、時には城跡に立ち、城下町を歩き、その土地の空気を感じるようにしています。見出した史料を読み解き、江戸時代の人々の息吹に触れることが、何よりも魅力的です。

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 受験勉強では、目標達成のため、無駄なく効率的に取り組むことが良しとされていたかもしれません。しかし、高校までの勉強とは違い、大学での学びは、自ら問いを立て、それを解き明かしていく、学問や研究の世界です。一見無駄に見えるような回り道こそ、あらたな発想や発見に繋がる重要な道だったりします。
 大学時代は、一番自由に自分のために時間を使える時期です。遠回りを恐れず、何事にもじっくりと取り組んでみてください。そして、さまざまなことに挑戦し、夢中になれるものを見つけてください。


教員紹介


氏名
福留 真紀
フリガナ
フクトメ マキ
職種
准教授
所属
文化史学科(2025年度より総合文化学科)
取得学位
博士(人文科学)
学位取得大学
お茶の水女子大学
最終学歴
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程国際日本学専攻
専門分野
日本近世史
研究テーマ
私は日本近世政治史を専門としている。「江戸時代」を解き明かしていくことは、「現代とは」「日本とは」「歴史とは」何か、という大きな命題へ繋がるものであり、これらの壮大なテーマには、アプローチの方法も、それによって描かれる歴史像もさまざまである。私は、その多様な切り口のうち、「人」にこだわって、これらの命題に向き合っている。
所属学会(役職)
及び受賞歴
史学会
日本史研究会
歴史学研究会
日本歴史学会
主要業績
【著書】
・『徳川将軍側近の研究』校倉書房、2006年
・『将軍側近 柳沢吉保 ―いかにして悪名は作られたか』新潮社、2011年
・『将軍と側近 ―室鳩巣の手紙を読む』新潮社、2014年
・『名門水野家の復活 ―御曹司と婿養子が紡いだ100年』新潮社、2018年
・『名門譜代大名・酒井忠挙の奮闘』文藝春秋、2020年(角川学芸出版、2009年の増補・改訂版)
【論文】
・「田沼意次邸の「中御勝手通」―美濃衆東高木家の家督相続をめぐって」(『古文書研究』第76号、2013年)
・「将軍側近柳沢吉保の政治権力についての一考察 ―対馬藩主宗義方との初対面を例に―」(『九州地区国立大学間連携教育系・文系研究論文集』第3巻第1号(通巻16号)、2015年)
・「大奥御年寄の養子縁組 ―綱吉政権期の御年寄松枝をめぐって」(幕藩研究会編『論集 近世国家と幕府・藩』、岩田書院、2019年)
社会活動、
文化活動等

・小論「柳沢吉保 ―「侠気」の人?迎合しない人、慎みの人」(大石学編著『侠の歴史 日本編』下、清水書院、2020年7月)
・小論「柳沢吉保 ―史実とイメージ」(梶よう子『赤い風』文藝春秋、2021年4月の解説を執筆)
・先人たちの底力 知恵泉「大借金時代! 逆転の発想で乗り切れーー田沼意次」「大借金時代! 公共性重視で突破せよーー松平定信」出演(NHK Eテレ、2021年11月9日、11月16日)
・講演「川越藩主「酒井氏」 ―徳川政治における重忠・忠利・忠勝」(川越市制100周年記念歴史講演会、2022年1月29日)
・「古文書から歴史を読む」【徳川幕府編・初~中級者用】講師(パルテノン多摩、2022年9~10月)
・講演「将軍側近からみる徳川政治」(歴史文化講演会in白河、福島民友新聞社・(一社)漢字文化振興協会・(公財)徳川記念財団、2022年12月11日)
・「徳川幕府の世界2 ―柳沢吉保とその周辺②」(朝日カルチャーセンター新宿 2023年1~2月)