鈴木 卓 教授
英語英文学科(2025年度より総合文化学科)
日常のことばにひそむしくみやしかけを探る
日常の言葉を分析する「談話分析」と、その言語教育への応用が専門です。友だち同士が喫茶店でする会話は、英語と日本語でどう違うのか、などを調べています。教員インタビュー
Q1
学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。
大学ではイタリア語とイタリア文学(ルネサンス期にイタリア語で書かれた詩など)を専攻しました。が、あまりできのよい学生ではなく、所属していた陸上部の部室や運動場で過ごす時間のほうが長かった気がします。高校生の頃から英語には割と自信があったので、自分がなかなかイタリア語ができるようにならないのをくやしく思いつつ、あてもなくグラウンドをぐるぐると走り続けていたのを覚えています(その時間を勉強にあてればよかった!)。幸いよい友達とよい先生方に恵まれたのが救いですが、とくに一二年生の間はあまり充実した学生生活とはいえず、どちらかといえば鬱々として過ごしていました。Q2
先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。
上に書いたように、英語はある程度できるようになったのに、なぜイタリア語はなかなか上達しないのかと不思議に思ったことがきっかけで、大学の授業でイタリア語よりも英語学や言語学、応用言語学等の授業をたくさんとり始めました。同時にアルバイトで塾や英会話学校・日本語学校等で教え始め、ますます第二言語習得のしくみや教授法に興味を持ち、また日本語と英語の言語的違いを調べたいと思ったことが、今の専門に興味を持ったきっかけです。とくに、文や語句の構造よりも、より大きい単位である談話(会話や文章)の構造における日英の違いや共通点に興味を持ちました。Q3
研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。
私の研究分野は主に「談話分析」と、その成果の言語教育への応用について考える「言語教育学」です。伝統的な英語学の研究対象が主に語句や文だったのに対して、談話分析の対象は会話や文章、広告やスピーチ、インタビューなどのより大きなまとまりをもったことばです。私は中でも日常生活で話されるくだけた英語の会話を録音して日本語の会話と比較したり、教科書に出てくるようなややフォーマルな英語と比較したりしています。一例を挙げると英語の会話で「意見を述べる」際には、In my opinion とか As far as I’m concerned という表現を使う、と学校で習った人もいるでしょう。しかしビジネス場面などのフォーマルな英語ならともかく、若者同士のくだけた会話では、こういう表現はあまり一般的ではありません。それよりも、自分の体験談やエピソード等を通じて間接的に意見を述べるほうが、ずっと普通なのです。研究を通じてこういう事実を発見すると、英語を学ぶ人が自然な英語を話せるようになるために役立つことができるので、とてもうれしく思います。
Q4
学生へのメッセージをお願いいたします。
グローバル化の進んだ現代では、英語は国際語だから話せるようにならなければダメだとよく言われます。でもこれは逆に言えば、英語という言語がアメリカ人やイギリス人やオーストラリア人だけのものではなく、世界の人々の共有言語になってきたのだということです。つまり一定以上の英語力を持つ人はみな、国籍や性別や文化に関わらず、平等に発言権を得られるのです。実際に世界のIT企業のトップにはインド系の人が増えていますし、北米等の大学の理系コースには数学が得意なアジア人が多数を占めている学校がたくさんあります。英語は「話せるようにならなければいけない」から勉強するのではなく、「話せるようになれば、自分の可能性が何十倍にも広がる」から学ぶと言えます。間違えたらいけないと慎重になりすぎることなく、まずは自分の気持ちや意見を伝えることを考えましょう。そして積極的な気持ちと態度で、共に英語を学び、そして使っていきましょう。教員紹介
氏名 | 鈴木 卓 |
フリガナ | スズキ タカシ |
職種 | 教授 |
所属 | 英語英文学科(2025年度より総合文化学科) |
取得学位 | 博士(応用言語学) |
学位取得大学 | マコーリー大学(Macquarie University) |
最終学歴 | Macquarie University, Department of Linguistics, Doctor of Applied Linguistics |
専門分野 | 言語教育学・談話分析 |
研究テーマ | 談話の分析とその言語教育への応用について研究しています。英語と日本語の会話やテキストを研究対象として、談話構造や会話運営上の仕組み・文法現象等に ついて調べたり、言語・文化間比較をおこなったりしています。またそうした研究の知見をいかに言語教育に応用しうるかを考えています。 |
所属学会(役職) 及び受賞歴 | 全国語学教育学会(JALT) 大学英語教育学会(JACET) International Pragmatic Association(IPrA) |
主要業績 | 【学術論文】 ・Co-constructions in Japanese and English revisited: A quantitative approach to cross-linguistic comparison. (Suzuki Takashi and Usami Mayumi) 『自然会話分析への言語社会心理学的アプローチ − 言語情報学研究報告 13』 2006年 ・Teaching Casual Conversation: Some suggestions for teaching storytelling skills to Japanese students of English. In Readings in Second Language Pedagogy and Second Language Acquisition: In Japanese Context (eds. A.Yoshitomi, T.Umino, and M.Negishi) 2006年 ・「「意見を述べる」という機能を持つ英語会話物語 : 教育的観点からのケース・スタディ」 『清泉女子大学紀要63』 2015年12月 ・Sharing Attitude in Conversational Storytelling: a study of evaluative expressions in English and Japanese oral narratives from a pedagogical perspective (International Conference on the Language of Evaluation, 山東大学(中国))2015年12月 ・「和英辞書用例におけるジェンダー-iPhone搭載辞書の場合」『言語教育研究9号』2017年7月 ・「日本語会話物語の類型:対人的機能による分類」『自然会話分析への語用論的アプローチ』ひつじ書房 2020年3月 ・「大学入試における英語外部テスト利用の再検討」『言語教育研究12号』(清泉女子大学言語教育研究所)2020年7月 【翻訳】 ・「外国語の授業における隠れた文化ー教える側と学ぶ側の考え方の違いを超えて」(Eleanor Jorden著, 鈴木卓訳、365頁~382頁) 『共生社会の異文化間コミュニケーション』(ベイツ・ホッファ、本名信行、竹下裕子編著)三修社 2009年3月 ・『ポライトネスの語用論』共訳(365頁~443頁)研究社 2020年6月 (原著:Geoffrey Leech (2014). The Pragmatics of Politeness, Oxford University Press.) |
社会活動、 文化活動等 | ・『談話分析ワークブック』(大学用教材 饒平名尚子編 内2章を執筆)2004年 ・『世界の多様な英語1・2』(大学用教材 竹下裕子他との共編著)2009年 ・NHK語学学習ポータルサイト『ゴガクル』英語問題作成・解説執筆(一般用教材) 2010年-2011年 ・「おとなのためのGrammar講座」 NHKラジオ『英語ものしり倶楽部』出演・同テキスト担当箇所執筆(一般用教材) 2010年-2011年 ・『ヒントと例文で学べる表現英作文』 (大学用教材)2011年 |