和田 桂子 教授
英語英文学科
比較することが発見を生む、比較文化の研究
比較文学・比較文化を専門に研究しています。主に英米文学が日本近代文学に与えた影響や、逆に日本の文化・文学が欧米に与えた影響などを調べています。教員インタビュー
Q1
学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。
高校までは日本だったのですが、大学からアメリカに進学し、誰も知らない、何もわからない、という状態で学生生活をすごしました。とにかく勉強についていくのが大変でした。つらい体験でしたが、卒業して帰国したときは、多少の試練ならば乗り越えられるという自信がついていました。勉強以外には、オーディションを受けて12人編成のコーラスグループに入ったり、英詩を書いて発表したり、ピアノを弾いたりしていました。というと活動的にすごしたように聞こえますが、それらはみんな私にとってセラピーの一種であったと考えています。つまり自己表現をすることによって、孤独と生きづらさを緩和しようとしていたのではないでしょうか。Q2
先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。
私の専門は比較文学です。日本人の私がアメリカでいったい何をしているのだ、という自問から出発したものです。当時アメリカでは日本文化は今ほど受容されておらず、アニメや漫画のブームもありませんでした。かろうじて川端康成が時々話題にのぼりましたが、一般の理解は首をひねるようなものでした。というわけで、私の卒論は「アメリカにおける川端康成の受容」となりました。次に、川端が「少し真似をしてみたこともある」と書いているジェイムズ・ジョイスの作品に興味を持ち、そのあと、ジョイスの作品を最初に日本に紹介した野口米次郎に興味を持ち、野口が英詩人として評価された英米の詩壇に興味を持ち、それからはロンドン、ベルリン、パリ、上海などの都市を訪れた日本人文学者の記述に興味を持ち、という具合に、いわば「いもづる式」に興味をつなげる形で比較文学研究を続けています。Q3
研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。
興味が広がっていくにつれ、それらが単独で訴えかけてくるというよりは、重層的に有機的に迫ってくるところが面白いと思います。たとえば英米文学作品を単体で見ていくのとは違い、同時代に日本では何がおこっていたか、どんな日本人作家がその英米作家を訪れてどんな影響を受けたのか、またその頃フランスでは どんな文学運動が始まっていたか、ドイツでは、中国では、というふうに見ていくのは刺激的で楽しいことです。ただ、そのためには緻密な文献調査と体力を消耗する実地調査が必要で、ほとほと疲れてしまうこともあります。Q4
学生へのメッセージをお願いいたします。
混迷の青春時代をすごした私がえらそうに言えることは何もありませんが、もしアドバイスすることがあるとすれば、少し無理をしなさい、ということでしょうか。ちょっと背伸びをする、できないんじゃないかと思えることにあえて挑戦してみる・・・。もちろんそれで心身を壊してしまっては元も子もありませんから、そのさじ加減が重要でしょう。そういう意味では自分を知ろうとすること、つまり「私はなにものか」という問いを常に発していく、ということにつながるのかもしれません。一日一日が貴重です。どうか十分に悩み、十分に生きてください。教員紹介
氏名 | 和田 桂子 |
フリガナ | ワダ ケイコ |
職種 | 教授 |
所属 | 英語英文学科 |
取得学位 | 修士(文学) |
学位取得大学 | 神戸女学院大学 |
最終学歴 | 神戸大学大学院博士課程後期(文化学研究科 文化構造専攻)単位取得満期退学 |
専門分野 | 英文学・比較文学 |
研究テーマ | 主に英文学と日本近代文学との関わりを研究している。日本におけるジェイムズ・ジョイスの受容、ロンドンにおける野口米次郎の受容のほか、外国の大都市に滞在した日本人が、何を摂取して帰国したかといった比較文化的側面にも光をあて、総合的な研究を志している。 |
所属学会(役職) 及び受賞歴 | 日本比較文学会 日本英文学会 日本アメリカ文学会 ヨーロッパ日本研究協会 |
主要業績 | ・『二〇世紀のイリュージョン―「ユリシーズ」を求めて』(単著)白地社 1992年2月 ・『言語都市・上海』(共著)藤原書店 1999年9月 ・『言語都市・パリ』(共著)藤原書店 2002年3月 ・『言語都市・ベルリン』(共著)藤原書店 2006年10月 ・『言語都市・ロンドン』(共著)藤原書店 2009年6月 |