海外で活躍する卒業生

[日本語教師(タイ)]

就職先を海外に求め、タイで日本語教師に

タイ中北部日本語キャンプにて【タイ中北部日本語キャンプにて】
 私は『今を生きる「在日」』というテーマで卒業報告書(地球市民学科生にとって卒業論文にあたるもの)を執筆しました。多くの「在日」の方々と出会い、語り合う中でこの研究をもっと続けたいと考え、大学院に進学しました。異文化との出会いを楽しみ、大切にしていく姿勢を地球市民学科で学んだことが、今のタイでの生活に繋がっていると思います。

 いざ修士論文の集大成に入ろうという時期に差し掛かった頃、もっと異文化に触れていたいと思い、「海外 就職」とインターネットで検索していると、私の目に飛びこんできたのは「日本語教師」という文字でした。学部生時代に日本語教員課程を履修していた私は、直感的に「これだ!」と思いました。さらにインターネットで調べてみると、東南アジアの多くの国々で日本語教育が行われていることを知り、その中でもなんとなくタイに惹かれました。中学・高校の教員免許を取得していたこともあり、タイの公立中高一貫校に履歴書と志望理由書を送ったところ、面接もなく、すんなりと採用していただけました。「こんにちは」と「ありがとう」にあたるタイ語だけを覚え、いざタイへ。私の赴任先は首都バンコクからバスで北へ5時間。タイのピサヌローク県にある公立の中高一貫校で一年間働いた後、現在ナレースワン大学人文学部東洋言語学科日本語科で日本語を教えています。
学科パーティーで学生と【学科パーティーで学生と】
 今は、文法のクラスと会話のクラスを週16時間、大学附属高校で週3時間担当しており、授業はすべて日本語です。毎回の授業で耳にするのは、「先生、むずかしいですー。」という一言・・・。わからないところは「わからない」と主張してくれたり、表情からも読み取れたりするので、どうしたらわかりやすく、学生の興味を引き立たせる授業ができるのか試行錯誤の日々です。毎回、教材研究、授業準備をして授業に臨みますが、学生主体の授業のため、意外なところで盛り上がったり、横道にそれたり、それも授業の楽しみのひとつです。授業以外でも学生と一緒に市場へ行ったり、他愛のない話をしたり、タイ語を教えてもらったりと、学生との時間も大切にしています。「先生、タイ語上手ですね!」と学生に褒められたり、笑われたりしながら、私も一からタイ語を勉強しているので、学生の立場に立って授業をすることができます。

 フィールドワークで学んだ「相手に寄り添うこと」。先生の目線ではなく、学生の立場に立って授業づくりをしていくこと、これもそのひとつだと思います。地球市民学科での学びは、仕事においてだけでなく、生活や生き方、価値観、考え方、つまり、「自分そのもの」に繋がっていることに気付かされました。

価値観を変えてくれたアフリカ・マラウイでのフィールドワーク

 大学1年生のときは、卒業後は日本で働くことになるのだろうと漠然と考えていましたが、大学2年生のときに体験したマラウイでのフィールドワークを通して、未知の世界を知る楽しさを五感で感じ、熱く議論しあう素敵な仲間と先生に出会い、今までとは大きく価値観が変わりました。
 自分の考えはたくさんある考えの中の一つにすぎず、実際に足を運び、自分の目で見て、肌で感じること、また、感じただけで終わらせるのではなく、仲間と共有し、深く考えて、自分なりの答えを導き出すことの面白さを知りました。

 海外で働き、生活することは楽しいことばかりではありません。現地採用された当初は不安ばかりでした。学校に日本人が1人しかいない、海外での単身生活も初めて、言葉もわからないといった状況でした。
 しかし、「やってみなければわからない」と思い立ち、色々な学校行事や活動に積極的に参加し、たくさんの人々と交流をしてきました。こう思えたことや未知の世界へ入り込むきっかけもフィールドワークにあったと思います。タイ人とつたないタイ語や日本語で話していると、自分が日本人であることを忘れてしまいます。そこにあるのは「人」と「人」とのつながりであって、国籍や人種は関係ないのだということを再認識しました。人と出会い、未知の世界に出会い、人と触れ合うことの楽しさ、異文化に入り込む大切さを教えてくれたのは、地球市民学科での学びだったのだと思います。

 今後はタイの人々と共に生活をする中で、彼らの生活、国民性、価値観にもっと入りこみ、私が今携わっている「日本語教育」、そして「タイ文化」、この2点に重点を置いて、これからの“タイライフ”を楽しみたいと思っています。
S.K.さん

[日本語教師(タイ)]

ナレースワン大学
S.K.さん
2012年 地球市民学科 卒業
私立 東京家政大学附属女子高等学校 出身

*掲載内容は取材当時のものです。