スペイン語劇と字幕翻訳に挑戦

スペイン語スペイン文学科の特徴的な授業をご紹介します。
スペイン語スペイン文学科では、「演劇」と「翻訳」の2つの授業(「スペイン語演劇実習Ⅰ・Ⅱ」「スペイン語演劇演習Ⅰ・Ⅱ」)がコラボし、年に一度、スペイン語劇の上演を行います。


2023年度

2023年7月6日に本学講堂で上演されたスペイン語劇 ”Tejas verdes”の映像です。
“Tejas verdes” ショート版
(1分14秒)

2022年度

2022年度の集大成として本学講堂で上演されたスペイン語劇 “Crímenes ejemplares” (犯罪見本集)の映像です。
“Crímenes ejemplares”ショート版
(1分01秒)

“Crímenes ejemplares”は、パリに生まれ、第一次世界大戦が勃発するとスペインに逃れ、その後各地を転々として最後にメキシコに渡りそこで生涯を終えた作家Max Aub(1903-1972)の短編集(1957)です。その中から5作を選んで演劇に仕立てました。ひとつひとつが殺人や自殺といった「死」のテーマに皮肉やブラックユーモアをちりばめたごく短い物語で、登場人物が不可解な行動に走った結果、衝動的に犯罪が生じます。暴力がいかに理不尽で身勝手な行為であるかを描いています。
人間らしさを奪う暴力と不寛容への抵抗がこの短編集の通奏低音をなしています。世界各地で戦争や紛争が絶えず、不安定な現代に生きるすべての人に向けた平和の呼びかけになることを願って、上演作品を選びました。学生たちの熱演と字幕翻訳の成果をぜひご覧ください。

2021年度

2021年度の集大成として本学講堂で上演されたスペイン語劇 ”El Trovador(吟遊詩人)”の映像です。
“El Trovador” ショート版
(1分51秒)
“El Trovador” は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲したオペラ『イル・トロヴァトーレ』の原作となった戯曲です。
スペイン人作家アントニオ‧ガルシア‧グティエレス(1813-1884)が23歳で執筆し、スペインのロマン主義演劇を世界の最前線に押し出した名作です。

学生による体験談

「スペイン語演劇実習Ⅰ・Ⅱ」「スペイン語演劇演習Ⅰ・Ⅱ」の2つの授業を履修したスペイン語スペイン文学科の学生インタビューです。

劇を演じる(スペイン語演劇実習Ⅰ・Ⅱ)

金澤さん金澤美波さん(画像左)
スペイン語スペイン文学科4年
※学年は取材時のもの
Q. 授業で大変だったことは?
A. まずスペイン語でセリフを暗記すること、次に身体や表情で演技することでした。

Q. それらをどう克服しましたか?
A.  セリフは日々の練習を重ね、演技については皆で話し合って役作りに活かしました。

Q. 授業の中で感じたスペイン語スペイン文学科の良さやスペイン語圏の文化を体験して学んだことは?
A. 学科はもともと少人数制のため、気軽に話し合いができました。率直さを大切にするスペイン語圏の文化も影響したと思います。

Q. どのように自分が成長しましたか?
A. 価値観や意見のすり合わせの大切さを学びました。また、人前で発表する度胸がつきました。

感想

中学時代は演劇部に所属し、日本語での劇の経験はありました。しかしスペイン語での劇は私自身にとってはかなり難易度の高い挑戦でした。乗り切れる自信がなかったので、最初は演劇の授業を履修するつもりはありませんでした。でも、友達から誘われたことに加え、「できる・できない」ではなく「やりたいか・やりたくないか」が大切だと考え、履修に至りました。

本番の12月の上演のために、夏ごろから本格的に台本の暗記に取り組み始めましたが、初めは全く覚えられませんでした。台本は普段授業で使うようなレベルのスペイン語ではなく、古典的な文学作品だったからです。それだけではなく、物語を理解したうえで、演じながらセリフを話すことに最も苦心しました。セリフをようやく覚えられたのは11月になってからでした。覚えるにはただ練習あるのみで、電車の中など隙間時間にも台本を読み、ZOOMを使い友達と練習をしました。そして本格的に演技指導に入ると、役者自身がどのように自分の役を捉えているのかが目に見えるようになりました。声色など細かい点まで情熱的な指導があり、(男役だったからかもしれません)先生との解釈の違いにも気が付きました。先生の指導に対し、自身の解釈の方がより良いのではかないかと考えた場合には、しっかりと意思表示をして折り合いをつけていきました。

少人数だったこともあり、積極的に話し合いができました。また、スペイン語演劇演習Ⅱで作成した字幕(日本語訳)を使うことで、よりスムーズにできました。

モヤトロ(※)の経験を経て私が気づいたことは、価値観や意見のすり合わせの大切さです。表面上互いに合わせるだけでなく、根本的な部分を理解し合うことでよりよい劇になりました。普段の生活でも相手の価値観を理解し、意見を交わしながら合意形成するということは、良い関係を構築するにあたっても活かすことができると考えています。また大勢の観客の前でスペイン語劇を演じたことにより、度胸と自信がつきました。この経験は就職活動でもプラスに働き、面接の際にもあまり物怖じしないといった評価をいただきました。自信と度胸は最強の鎧なのではないでしょうか。

※モヤトロ(Moyatro)とは…演劇(Teatro)とモヤノ先生(Moyano)の名前を組み合わせた造語で、演劇授業の通称。

字幕を作成する(スペイン語演劇演習Ⅰ・Ⅱ)

字幕舞台の両横に日本語訳のスクリーンを設置
Q. 授業で大変だったことは?
A. 脚本が古典的な文学作品だったためスペイン語そのものが難しく、辞書で引いた意味のままでは理解できず大変でした。

Q. それらをどう克服しましたか?
A. 違う言葉に言い換えてみたり、おかしな文章でもとにかくまずは訳を作ってみたりして、工夫しました。

Q. 授業の中で感じたスペイン語スペイン文学科の良さや、スペイン語圏の文化を体験して学んだことは?
A. 先生からの密なフィードバックがあり、徐々に解釈できるようになりました。また、同じ授業を履修した仲間と意見を言い合えたことも助けになりました。

Q. どのように自分が成長しましたか?
A. 文学作品を理解するにあたり、様々な解釈に触れることの大切さを学びました。

感想

この授業では劇の台本の翻訳を行いました。当初はその分量に圧倒されましたが、実際に始めると全員で分担したため、一人の担当ページは思ったほど多くはありませんでした。しかしながら内容については、これまで触れてきたどんなスペイン語よりも圧倒的に難しいものでした。

また、戯曲ならではの主語や動詞の使い方があり、「誰が誰に向けたセリフ」なのかを考えることも難しかったポイントです。「主語が誰か」によって作品の理解が変わるため、その点に一番気をつけて進めました。このようにわからないことだらけでしたが、まずはおかしな文章でも形にして、そこから想像を膨らませたり、言い換えを行ったり、試行錯誤を繰り返していきました。

特に印象に残っているのは先生が作ってくださったPowerPointを用いたあらすじ解説です。耳や文字のみで理解するだけでなく、絵としてそのシーンを再現していくことにより理解が深まりました。また、先生と学生の解釈が違うところではどのように違うのか、どう訳したら良いのか学生と共に丁寧に考えてくださったので、自分自身ももっと大胆に訳を付けてみようという気持ちになれました。

そうした中で様々な解釈に触れることができ、自分の考えの浅さや、考え方に正解はないと気づくきっかけにもなりました。自分の考えを持ち発信することも大切ですが、他の人の意見にも耳を傾け、幅広い視野で作品をとらえることはさらに大切だと学びました。


授業の概要

演劇(スペイン語演劇実習Ⅰ・Ⅱ)

(2021年度まで:スペイン語演習1・2)

IMGP6224
この授業では、全編スペイン語で演劇を上演します。
役者・照明・衣装・化粧・セットなどの担当に分かれて、上演に向け練習を重ねます。
スペイン語のセリフを覚えるだけでなく、古典的な異文化をその背景ごと全身で感じ、表現力を磨き、自ら学び、考え、発信できる力を養います。コミュニケーション能力を身につけ、作品を通して異なる文化や思想への理解を深めています。

担当教員
フアン・カルロス・モヤノ 先生

翻訳(スペイン語演劇演習Ⅰ・Ⅱ)

(2021年度まで:スペイン語演習17・18)
駒井先生授業
この授業では、スペイン語劇(モヤノ先生担当)の上演時に使用する日本語の字幕翻訳を作成します。
スペイン語の戯曲を精読、セリフを日本語へ翻訳し、翻訳とは何か、字幕翻訳はその他の翻訳とはどのように違うのか、何が大切なのかということについて考察します。戯曲を上演するためには、翻訳だけではなく、登場人物の人物造形や背景、場面を解釈する力も必要です。文学を深く理解し、日本語で表現する方法を学ぶことができます。

担当教員
駒井睦子 先生


2022年度以降の授業名(ご参考)2021年度までの授業名
演劇
演劇実習Ⅱ(前期)スペイン語演習1(前期)
演劇実習Ⅰ(後期)スペイン語演習2(後期)
翻訳
演劇演習Ⅱ(前期)スペイン語演習17(前期)
演劇演習Ⅰ(後期)スペイン語演習18(後期)